― 注湯・後処理工程を例に、自社に適した自動化の進め方を考える ―

前回のコラム「鋳造工場の未来を支える自動化」では、鋳造業界における人手不足や技能継承、安全性向上といった課題に対し、自動化が重要な解決策のひとつであることをご紹介しました。
しかし、実際に自動化を検討する際には、
「自動化の必要性は感じているが、どこから手を付ければよいかわからない」
という悩みも少なくありません。
鋳造工場やダイカスト工場には、注湯、製品取出し、トリミング、切断、搬送など、さまざまな工程があります。その中から、最初にどの工程を自動化すべきか、判断に迷うこともあるでしょう。
今回は、注湯・後処理工程を例に、鋳造工程の自動化をどこから始めるべきか、その考え方をご紹介します。
自動化は「工程」ではなく「課題」から考える
自動化を進めるうえで重要なのは、最初から特定の工程に絞るのではなく、自社が抱えている課題を整理することです。
例えば、次のような課題が考えられます。
・ 安全性・作業環境:高温作業や重量物の取り扱いによる負担
・ 品質・技能継承:作業者による品質のばらつきや、熟練作業者への依存
・ 生産体制:人手不足や、多品種化・品種切替への対応
こうした課題の大きさや、自動化によって期待できる改善効果、導入の実現性などを踏まえ、優先順位を決めることが大切です。
では、具体的にどのような工程で自動化の効果が期待できるのでしょうか。
注湯工程の自動化で期待できる効果

注湯工程は、鋳造品の品質と作業者の安全性に関わる重要な工程です。
特に重力鋳造では、高温の溶湯を扱うため作業環境が厳しく、作業者への負担も大きくなります。また、注湯速度や注湯位置などの条件が製品品質に影響する場合もあります。
こうした工程にロボットを導入することで、次のような効果が期待できます。
・ 高温作業による負担の軽減
・ 作業者の安全性向上
・ 注湯条件の安定化
・ 品質のばらつきの抑制
注湯工程の自動化は、人手不足への対応だけでなく、作業環境の改善や品質の安定化という観点からも検討する価値があります。
ただし、期待できる効果は鋳造方式や設備構成、現在の作業方法によって異なります。まずは現場の課題を整理し、自動化によって何を改善したいのかを明確にすることが重要です。
後処理工程の自動化は、工法の選定が重要
鋳造品は成形後、ゲートや押湯の除去、トリミング、切断などの後処理工程を経て、次の工程へ送られます。
これらの作業では、重量物の取り扱いや繰り返し作業による負担に加え、製品形状や加工条件によっては品質のばらつきが課題となることもあります。
後処理工程の自動化を検討する際には、単にロボットを導入するだけでなく、製品形状や生産数量、求められる品質などに応じて適切な加工方式を選ぶことが大切です。
プレストリムとロボットトリムの違い

ダイカスト製品のトリミング工程では、従来からプレストリムが広く採用されています。
プレストリムは専用のトリム型を用いて加工する方式で、サイクルタイムを短くしやすく、大量生産に適していることが特長です。一方、製品ごとに専用型が必要となるため、品種変更や新製品への対応では、金型の製作・変更などを考慮する必要があります。
これに対し、ロボットトリムは、ロボットで工具を動かして加工する方式です。プログラムの変更などによって加工経路を調整できるため、品種切替が多い現場や、多品種少量生産などで柔軟性を発揮します。
それぞれの主な特徴を整理すると、次のようになります。

もちろん、どちらか一方が優れているというわけではありません。
生産数量や品種数、加工精度、サイクルタイム、設備投資などを総合的に考慮し、自社の生産条件に適した方式を選ぶことが重要です。
プラズマ切断による柔軟な加工への対応
後処理工程では、ゲートや押湯などの切断作業も自動化の検討対象となります。
切断工程の自動化では、製品の材質や形状、切断箇所、求められる品質などに応じて加工方式を選定する必要があります。
その選択肢のひとつが、ロボットを活用したプラズマ切断です。
プラズマ切断は、ロボットの動作と組み合わせることで、製品形状や切断箇所に応じた加工経路を設定できることが特長です。加工経路を変更しやすいため、品種変更がある現場でも柔軟な対応が期待できます。
一方で、適用できる材質や製品形状、求められる切断品質などによって、適した加工方式は異なります。導入を検討する際には、実際の製品や加工条件を踏まえた検証が欠かせません。
大切なのは、切断作業の自動化そのものを目的とするのではなく、現場の課題や生産条件に合った方法を選ぶことです。
鋳造工程の自動化、最初に取り組む工程の選び方
ここまで、注湯・トリミング・切断工程を例に、自動化の特徴をご紹介してきました。
では、自社ではどの工程から取り組むべきなのでしょうか。
まずは、現在の作業で何が最も大きな課題となっているのかを整理してみましょう。
| 優先して解決したい課題 | 自動化を検討する工程の例 |
|---|---|
| 高温作業の負担や安全面のリスクを軽減したい | 注湯工程 |
| トリミング作業の負担や品質のばらつきを改善したい | トリミング工程 |
| 品種切替への対応や、切断作業の省人化を進めたい | 切断工程 |
もちろん、これらはあくまで一例です。人手不足や品質の安定化といった課題は複数の工程に共通するため、工程ごとの作業負担や改善効果を比較しながら検討することが大切です。
また、課題が大きい工程であっても、製品形状や生産数量、設置スペースなどの条件によっては、すぐに自動化することが難しい場合もあります。
そのため、解決したい課題の大きさ、自動化による改善効果、導入の実現性という3つの視点から優先順位を決めることが、自動化を成功させる第一歩となります。
2026日本ダイカスト展示会で実機デモをご紹介
三明機工は、2026日本ダイカスト展示会(j-dec2026)に出展いたします。
当社ブースでは、次のシステムの実機デモを中心に、鋳造工程の自動化ソリューションをご紹介します。
・ 注湯ロボットシステム
・ トリミングロボットシステム
・ プラズマ切断ロボットシステム
「自社ではどの工程から自動化を始めるべきか」「プレストリムとロボットトリムのどちらが適しているか」「切断工程を自動化するには、どのような方法があるか」など、自動化に関する疑問をお持ちの方は、ぜひ会場でお気軽にご相談ください。
実機デモをご覧いただきながら、自社の課題に合った自動化の進め方を考える機会として、ぜひ当社ブースをご活用ください。
まとめ
鋳造工程の自動化を進める際には、最初から特定の工程に絞るのではなく、自社が解決したい課題を明確にすることが重要です。
・ 注湯工程では、安全性の向上や注湯条件の安定化が期待できる
・ 後処理工程では、生産条件に応じた加工方式の選定が重要となる
・ 課題の大きさや改善効果、導入の実現性を踏まえて優先順位を決める
自動化は、設備を導入すること自体が目的ではありません。現場の課題を把握し、自社に合った方法を選ぶことが、効果的な自動化につながります。
次回は「ロボット導入を成功させるために考えるべきポイント」をテーマに、自動化計画を進める際に押さえておきたいポイントをご紹介します。
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